交通事故による解雇の正当性と休業損害

交通事故があると、治療の為に会社を長期的に休む場合があります。その結果、会社から懲戒解雇と伝えられるケースもありますが、必ずしも正当であるとは限りません。不当であると判断されれば、無効になる可能性があります。

また解雇に対する慰謝料は、事故との因果関係が証明されれば、原則支払われます。因果関係の証拠がなければ、慰謝料が支払われるのは原則困難ですが、状況によっては支払われる可能性もあります。

交通事故が原因で解雇される

交通事故があった後は、長期的な治療が必要な事もあります。後遺症が心配な症状なら、しばらくの間は病院で治療を続ける事も多いですが、問題は勤務先に対する影響です。症状が重たい時は、どうしても会社を休む事もあります。

しかし休んだ期間が長引きますと、会社の売り上げ数字にも影響が及んでしまう訳です。ですから会社としては、事故にあった従業員を解雇する場合があります。

プライベートの交通事故による解雇は認められるのか

ところで懲戒解雇は、必ずしも正当であるとは限りません。状況によっては、解雇は正当でないと見なされて、取り消しされる場合があります。例えば、プライベートの交通事故です。従業員を解雇できるのは、基本的には勤務中の事故に限定されます。

そもそも交通事故は、必ずしも勤務中に発生するとは限らず、プライベートもあります。休日にドライブしていたものの、交通事故になるケースも多いですが、それは懲戒解雇の対象外になる訳です。

ですから私生活の交通事故だった時は、たとえ会社から解雇と伝えられても、無効扱いになる場合があります。ただし会社の信用問題が関わってくる時は、話は別です。例えばバスの運転手が、業務の時間外に飲酒運転をしてしまい、交通事故になったとします。

その結果、バス会社の信用が落ちてしまった時は、解雇対象になる可能性があります。

就業規則で明示されているかどうか

では業務中の交通事故により解雇は正当と見なされるかというと、必ずしもそうとは限りません。その理由の1つは、就業規則です。就業規則には、たいてい懲戒解雇に関する内容も盛り込まれています。どのような状況の時に解雇になるかが、規則で明示されている訳ですが、たまにそれが無い企業もあります。

そもそも会社によっては、就業規則が存在しない事もあります。その場合は、解雇とは認められない事が多いです。また就業規則はあっても、企業によっては解雇に関する記載が皆無な事もあります。また就業規則に解雇に関する内容は盛り込まれていても、交通事故について言及されていないケースもあります。

具体的な内容が書かれていない就業規則も、稀にあるのです。その状態で懲戒解雇と伝えられても、無効と判断される事が多いです。

解雇のためには手続きも必要

それと懲戒解雇は、本来は相応の手続きを踏む必要があります。きちんと手続きが踏まれていないと、解雇とは認められない事があります。というのも従業員の解雇は、非常に重たい処分になります。本来企業は、従業員を簡単に解雇する事はできず、まず手続きを踏む事になるのです。

例えば、委員会の開催です。従業員を解雇すべきかどうかを、複数名で議論する委員会を開催する訳ですが、解雇される側の主張も聴取する必要があります。相手の言い分も十分理解した上で、組合との協議も行い、改めて懲戒解雇するケースも多いです。

ところが企業によっては、正当な手続きが実行されていない事があります。現に過去には、適切に手続きを行っていなかったので、交通事故の解雇は無効という判決が下った事もあります。

交通事故でなく別の理由がある可能性も

また懲戒解雇は、そもそも交通事故が原因でない事があります。例えば、上司との人間関係です。会社での人間関係は、必ずしも良好であるとは限りません。人によっては人間関係が少々微妙で、上司からあまり良く思われていないこともあります。

上司としては、何とか従業員を解雇する為に、理由を付けてくる事も考えられます。その理由の1つが、交通事故です。つまり実際には、上司から良く思われていないので解雇と伝えられる訳ですが、その建前が交通事故になっている事もあります。

少々極端な例ですが、Aさんは上司のBさんとの人間関係が微妙でした。Bさんは、Aさんを解雇したいと思っていたところ、ある日にBさんは交通事故を起こしました。Aさんは会社を休んだものの、休業日数が特に長い訳でもなく、売上にはあまり大きな影響はありませんでした。

しかしBさんは、Aさんに解雇だと伝えるケースもあります。この場合は、不当解雇の可能性があります。

休業損害は因果関係の証明が必要

ところで交通事故で解雇になった時は、慰謝料は請求可能です。実際に、解雇後に保険会社に休業損害と伝えてみて、認められたケースもあります。ただし条件もあって、事故との因果関係を証明する必要があります。例えば書類です。

交通事故でしばらく休業しているなら、病院に記録は残っている筈です。診察に関する記録もあるので、病院に申請すれば、診断証明書を発行してもらう事もできます。それと退職に関する書類です。

退職すれば、必ずと言って良いほど書類のやり取りがあります。退職後に、書類を受け取るケースも多々あるのです。それらの書類を準備して、解雇と交通事故との因果関係を証明する方法があります。

いくら支払われるのか

なお休業損害の金額ですが、基本的には給与の月額を基準に算出されます。例えば交通事故による解雇の後に、結局は裁判になりました。事故と解雇との因果関係も明確なので、休業損害も支払われる事になりました。そして毎月23万円受け取っているので、休業損害は69万円になりました。

すなわち「休業損害の月数」と「給料の月額」を乗じた金額が、休業損害として支払われる事になります。

証拠がない時はどうなるか

では、解雇と交通事故の因果関係が不明な時はどうなるかと言うと、全般的に難しくなる傾向があります。事実関係を確認できなければ、保険会社としてもお金を支払う事はできません。しかし因果関係を証明できなかったとしても、慰謝料が支払われている例もあります。

ある運送会社の従業員が交通事故を起こして解雇されてしまいました。解雇と事故の因果関係に関する証拠は、特にありませんでした。しかし裁判を行ってみたら、「そもそも事故を起こしていなければ、会社で勤務し続けていた可能性が高い」と判断されて、休業損害が支払われたという実例もあります。

ですから証拠がなければ、休業補償の支払いは不可能であるとは限りません。